4/07/2007

或る日の職場で 続この3人の場合



Cの場合2

やはり目測が当たって待望のアシスタント・マネージャーの地位に昇格された。主任長と組んだ事でやはり彼女の強い推薦があったらしい。
それに支店長には何気なく彼のお気に入りのオリエンタルオバサンをトレーニングしたのはこの俺様だと云ってやった。
ところが何てこった。支店長は俺と主任長がグルで販売成績向上に協力していないとこの俺様を企画からはずし、オリエンタルオバサンをアシスタントとしたではないか。
主任になって支店長から一番頼りにされていると思っていたのにだ。
それに主任に成ってから連日、第一の仕事である売り上げ勘定が合わないのは、最近他店から来た女の子が小銭を盗み取っているのではないかと確信し、彼女にちょっと嫌味を言ってやったら、その子が泣いて帰宅してしまい、その仕事の穴うめをしなければと思い、オリエンタルオバサンの休みを承知で急遽出勤を頼んだ。
オリエンタルオバサンが出勤を承諾してくれ、電話伝言を受けて直ぐ来てくれたので支店長からは減点を食らわないで済むと思いきや、例の彼女が翌日支店長に辞表を出し俺様への恨み言を並べたらしい。
後から主任長に聞いたところによると、あのオリエンタルオバサンが支店長に誰が泥棒の犯人であるのかを忠告してあったそうだ。しかもそれは俺様が自分のアシスタントに選んだあのKだったとは。小銭程度の問題なのでKは他店へ飛ばされ、そして彼の仲間のJは非を認めて退職した。
しかし、あのオバサン、どうして彼等が怪しいと知っていたのだろう。やはり皆が言うように地区長の回し者なのだろうか。
その後地区長の方から店内捜査が入り、俺様の企画がことごとく販売低下の要因を作っていると指摘され、最近では主任長までがこのオリエンタルオバサンをアシスタントに使い出し支店長に取り入り作戦と出て、俺様の出る幕がなくなりつつある。今は主任になったからは他店に修業を口実にいつとばされるかと、冷や汗の毎日なのだ。
以前いびってやったイラン人酒飲部主任はオリエンタルオバサンの夫の職場で優秀な大勢の中から選ばれて待遇入社(大学は入社とは言わないのか)したらしい。
あんなに彼の退職を激怒していた支店長もあのオリエンタルオバサンのプランでは仕方ないと、また直ぐ気を取り直し、返って自分達に非があって退職したのだとこの事でも俺様の方に悪い矛先が向いてしまったのだ。
以前勤務していた同僚から聞いた話しに、オリエンタルオバサンは精神的に参り易いらしいと聴いたので、時々彼女に脅しを掛けてみたりするのだけれど、彼女が動じている風が無いのはあれはガセネタだったものかなァ。
彼女の電話応対はマニュアルに載せられたものでいつもきっちり応対をするのをしっていて、時々無言電話を数回続けたりして様子をみたり、女の人が気味悪がる物を彼女の目の届くところに前日置いておくのだが、人の話では彼女は平気でかたずけをしているとか。でも内心はビクビクなんだろうよ。そうであって欲しい。何か巧い手立てで彼女を脅かしておいて、『何も心配しなくても僕が守って職場生活を快適にしてあげるよ』と彼女を見方につけるつもりさ。
それで、支店長にまたどのようにまた取り入る事が出来るかが問題だな。
オリエンタルオバサンはこのごろ俺様には慇懃無礼と言うか、笑顔で接客しているかと思うと、次の瞬間俺様の方に向いた時には真顔でしかとをきめているようだ。主任長は今こそ支店長と巧くやっているそぶりをしているが、やはり俺様の事を気にしてくれて時々こっそりと「支店長のいう事をそんなに気にしなくても私がなんとかしてあげるから」と言ってくれている。
でも、もしかしてその主任長もそろそろ他店移動の時期かもしれないから、そうしたら、また何か巧い方法でのし上がらなければ、これから主任長になるのは、そしていつかは支店長になる道が険しいようだ。
それにしてもあのオリエンタルオバサン、本当に俺様には目の上のタンコブの様な存在だな。どうしてくれよう。

Mの場合

この支店に転勤する前の支店長RのワイフJがここに支店長アシスタントとして長年勤めていると聞いて、彼女と組めば販売成績向上企画プランがスムーズにいき、本社から認められる日が案外早くやってくるかもしれないと大いに期待してきたのが、もののみごとにそれが失敗案である事に気が付いた。
Jはおしゃべりで、皆から好かれてはいるけれど、その仕事振りは適当で、他主任達にも厭きられており、彼女が主任試験を受けても支店長Lが彼女の仕事振りを認めない限りは彼女が主任には推される事は無いだろう。
そこで、一番バリバリ仕事をしている(と思われた)これまた主任試験を受けて長年支店長から待ったを掛けられているCを推して、主任にして、そして彼と組み協力してこの店を伸ばしていこうと考えた。
支店長は私がCをアシスタントにしたことを最初は喜んでいる風で私の申し出を受け、彼を主任に昇格したのだが、これがいつからか支店長が我々二人の企画が気に入らないと何かにつけては批判評価するようになり、接客係Nが夜勤から日中勤務に回ってきたのを機に彼女をアシスタントとして起用し、主任としての仕事を任せてしまう事となった。
私はプライドを傷つけられ、最初の頃はどうもこのNのことが好きにはなれず、この先どうしたものかと落胆せずにはいられなかった。
そこである日、支店長休みの日に、日頃から私の主任管理がなっていないと指摘されていた昨年からの遣り残しの倉庫整理やカウンター整理をNに「日にちはかかっても、自分の思うようにしてやって全部済ませて下さい」と渡してやった。
ところが、Nはその日のうちにかたずけ「これで良いかどうか確認して下さい。」と云って来た。
翌日支店長がそれを見て「君はやはり主任長として力がある」と誉めてくれた。Nはそれを側で聴いて、私に笑顔で応えた。そこで私は気がついたのだ。私はNを見間違っていた。彼女は私の見方であり、敵ではないのだ。
以来、Nと一緒にタバコ管理(これが、ずっと何故か経理書とかなり誤差があって)をしたり、商品額管理、人事関係にも協力してもらい、遂にはこの地区売り上げ第一店になった。
最初は小生意気な小娘と思っていたNが、実は3人の孫を育てている年長者である事を知ったのは驚きだった。
今は支店長と協力体制が巧く出来上がってきているので、Cが面白くない顔を私に向けたりしてもあまり気にならなくなった。
この支店にあとどのくらいの時期を勤めるのか解らないが頑張っていこう。このフロリダ州内の690店舗の中に女支店長は3/1も満たない、まだまだ男社会のこの世界でどこまで頑張っていけるかが難問だけれど。

Moの場合

以前の化粧部員は接客のみで店舗の美化にはあまり関与していなかったものだろう。
私が8年間勤めた店から、一年前に購入した自宅の近くのこの支店に転勤してきて、化粧部の販売員としてこの支店の売り上げを400倍にもしたと支店長を歓喜させ、大いに感謝された。
なのに何故、最近は売り上げが伸びないのはどうしてかと問われて、デスプレーに問題があるのではないかと支店長自身がそのセットを見直すことになった。
この店古参であるJはデスプレー及び価格表示のフロアー設置員であるけれど、何もかも非常にスローでオマケに私に彼女の遣り残しが回って来るのには大不満の私である。でもJは私にとっては楽しい井戸端会議には無くてはならない人物で、朝Jが出勤するとまずはお互いの生活報告をせずには一日が始まらないのだ。
私の定休日には接客係のNが化粧部で販売とデスプレーを行うのは何故なのか私には今も理解し難い。おまけに最近ではNのみに価格調整&表示見直し権利があるとかでコンピューターに表示される価格は彼女以外は皆が主任から承諾を得なければならない。
私がNと話すのは仕事に事ではなく、主に子供の学業上のプロジェクトの事とかで、Nは子供3人を育てているとかで、事プロジェクトの件に関しては彼女に聞けば大体の問題が解決される。なにせこちらの学校ときたら私の母国パキスタンでのそれとはまるで違っていて、オールAの息子ではあっても親の協力無しではプロジェクトが出来ない仕組みになっていて、それだけに彼女の情報は私にはとても大事なものなのだ。
第一虚弱体質の私がこの店に勤めているのも、この息子に彼の欲する全てのものを与えてあげたいという一心からだ。パキスタン人同僚のMwにしても彼女は未だに11歳になる息子には食事の際に彼女がスプーンで彼の口まで運ぶのだそうだ。
男、息子を大事にしないパキスタン女性は悪女であるのだ。
それにしても私もMwも息子一人だからいいけれど、Nは男の子が二人に女の子が一人いるそうだ。大丈夫なのかしら。あの勢いで仕事をしているからには多分彼女は学業以外では何も子供達にはしていないかもしれない。店ではいつも笑顔接客でも家では案外不幸な人なのかもしれない。
私は子供が幸せであれば、夫も幸せで、私は悪女でなくて良かった。